言葉とおカネがなくなれば、
世の中はもっとよくなる。
ことある度に
そう考えていた時期がありました。
「ありました」と過去形にしたのは、
今ではまったく考えなくなったからではなく、
考える頻度が低くなったというか、
いろんなことに
敏感じゃなくなくなったというか、
まあそんなことを
すっかり忘れている時間が
長くなっているからです。
生活とか、生活とか、
生活とかばかりしてて。
……あへっ?
昔と今の考え方の違いを
書こうと思ったんだっけ?
いやいや、言葉とおカネのことでした。
そうそう、なので、まずおカネ。
できれば、その弱点をクリアした
別物に置き換わってほしい。
需要と供給の物差しで
モノの優劣が決まるだとか、
泥棒して手に入れた1万円と
1日働いてもらった1万円が同じ価値だとか、
そういう弱点。
次に言葉。
これも弱点ありますね。
ぼくが考える一番の弱点は、
ウソがつけちゃうこと。
100%のそのままを伝えているようでいて、
実はそうじゃない。
虚構の内容で
(もしくは中途半端または過剰な装飾で)
伝達しちゃうのなら、
いっそ伝えないほうが、
本質は伝わる気がするんです。
で、この『蜜蜂と遠雷(下)』。
言葉って素晴らしいなと思いました。
印刷された文字を目で追っていくだけで、
音楽が頭の中で鳴るんです。
もちろん、作者の頭の中にある音と、
ぼくの頭の中の音は、まったく違うはずで、
それがさっき言った弱点なんだけど、
その弱点に頬ずりしたくなっちゃう。
どうしたもんでしょうか。
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