2011年4月14日木曜日

つながらないならショートショート

『四畳半王国見聞録』(森見登美彦)読みました。

中学生のころ、ぼくは毎日のように
星新一さんのショートショートを読んでいました。
5〜6ページで一つのお話が完結してしまうというあの短さが、
人並み以下の記憶力しか持たず、
頭の回転もそれに応じて鈍いぼくには、
ジャストフィットしていたんだと思います。

ああ楽しいな。面白いな。自分でも書いてみたいな。
この短さなら、ぼくにもできるんじゃないかな……。

と、中学生なので、よく勘違いしてました。

さらに、いろんな分野に共通すると思うのですが、
おうおうにして質の高いの作品(または製品)ほど、
「これなら自分でもつくれるじゃん」って
思わせてしまうようです。

なので、ぼくも書きました。ショートショート。
そう、単純なんです。うん、大丈夫、大丈夫って感じです。

ちょうど卒業文集をつくっている時期だったので、そこに載せる文章。
それにショートショートを書いて提出しちゃったんです。

提出後、一週間ほどたった日のホームルームの時間でした。

その日の議題は、「中学最後の文化祭に何をやるか」です。

まず担任の先生が言いました。
「先生の提案は、みんなでやる劇だ。
その劇に、いい題目を見つけたので、今から朗読する。
よく聞いて、みんなで判断してくれ。
──タイトルは『ぼくはロボット』だ」

そのタイトルを聞いた瞬間、
一人の生徒の顔が真っ赤になり、下を向いたかと思えば、
いきなり顔を上げてきょろきょろと左右を見たり、
果ては教室から逃げだそうと
立ち上がりかけたりするヤツがいました。

その挙動不審になったヤツ、それがぼくです。

先生の読んだ『ぼくはロボット』を書いたのは、
ぼくだったんです。

中学生活の思い出をつづる文集に、
ふざけたお話を書いて怒られるものだとばかり思っていたぼく。

それがなんと、担任の先生が興味を示してくれて、
面白いから、みんなで劇にしようとまで言ってくれた
(でも、文化祭の出し物は、結局お化け屋敷になったんですけどね)。

ぼくの書くモノって面白いんだ!

中学生ですから、よく勘違いします。
さらにその勘違いはその後の人生に大きく影響を与えます。

ぼくは今、文章を書いたりして、
いろんな媒体をつくる仕事をしていますが、
よくよく考えると、
その出発点はこの勘違いだったんでしょう、きっと。

あっ! いかん、いかん。
ここは『四畳半王国見聞録』の感想を書くスペースでした。

えーっ、この本、7つの短編で構成されてるんですが、
それぞれがつながっているようでつながっていない。

その中途半端さが、ぼくには中途半端でした。

つながるならつながる、つながらないならつながらない。
つながるなら一冊分の長い物語に、
つながらないなら、一つのお話をもっともっと短くして
ショートショートにしちゃってほしい。

あっそうだ、このショートショートのことが頭に浮かんで、
長々と阿呆中学生の話をしちゃったのでした。

とはいえ、森見さんの作品は、つまらなくないです。面白い。

中学時代に星新一さんに夢中になったのと同じように、
おじさんになったぼくは、森見さんの作品を追っかけています。


四畳半王国見聞録
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