小説の中に書き込まれる要素で、
バランスが大切だと、ときどき感じるのは、
説明しておくべきことと、
言わずに済ませることの比率です。
くどくどと説明をしちゃうと
物語のスピード感が削がれちゃう気がするし、
かといって説明不足だと
何の話をしているのかも伝わらない。
そしてそのバランスは、
その本が発表される時代によっても
変わるような気がします。
人の好みが変わるっていうのかな。
説明されたい人が多い時代と、
うざいうんちくなんか聞きたくない
って人が多い時代、って感じで。
で、この池澤夏樹さん訳の『古事記』。
明らかに
「説明なんか、いらねーぜ」時代の本でした。
例えば、こんな感じ。
王様が家臣に
「A男に家来になるよう伝えてこい」
と命令したので、家臣がそれをA男に伝えると、
A男は「はい、わかりました」と素直に応じた。
次に家臣は王のもとに行き
「A男は、イヤだと申しております」と報告。
それを聞いた王はA男を殺した。
えーっとつまり
「説明なんていらねーぜ」の時代です。
今なら、このエピソードだけで一冊本が書けそうだけどね。
読みやすかったです。
古事記 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集01)
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