あの粋な詐欺師たちの映画『スティング』を
初めて観たのは、たしか池袋あたりの名画座でした。
子ども番組じゃない大人の物語には、
主人公でも正義の味方でも
死んじゃう場面があるってことが、
わかってきた中学生のころ。
(正確には『ポセイドンアドベンチャー』を見たあと)
だからあのラストは衝撃でした。
あーあ死んじゃうのか……えっ、そうじゃない!
うへぇー!! これがどんでんってヤツだ!!
そんなんですから、
この映画は大のお気に入りになって、
友だちに話しまくりました。
「あれすげーよな!あのラスト!!」
でも、ガキ丸出しで騒ぐぼくを、
ふんっと鼻で笑う友だちがいました。
「まぁ、ラストに驚くのは、当たり前だよ。
でも、あの映画はラストがなくてもいい映画だった。
逆にラストで客を驚かせようって小細工なんかないほうが、
いい映画だったかもしれないな。
ぼくは、あの映画全体に流れる雰囲気が好きなんだよ」
くそ生意気なインテリ中学生。
いつもそんな感じに斜に構えた物言いをするヤツなんです。
たぶん、おじさんになった今のぼくでも、
このインテリ君は言い負かせないでしょう。
で、この『ビブリア古書堂の事件手帖4』。
ミステリ、謎解きで、ぐいぐい引っ張られるストーリー。
でも、ぼくが感じたのはインテリ君のような感想でした。
「ミステリの部分はもちろん楽しめる。
でも、仕掛けなんかいらないかも。
文章全体に流れる雰囲気が好きなんだなぁ」
ビブリア古書堂の事件手帖4 ~栞子さんと二つの顔~ (メディアワークス文庫)
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