この前の『鬼平犯科帳9』の
感想で書いた「上司」は、
かなりの太っ腹で、清濁併せのむというか、
世間の常識からすれば、
「それって詐欺じゃない?」
と言われかねないようなことでも、
「大丈夫、大丈夫」と、
平気でやっちゃうような人でした。
その「上司」が、しみじみと
こんなセリフを言ったのを覚えています。
「ワルになりきれないのが、
おれの悪いところだ。
ここってトコでブレーキがかかる」
この上司、ぼくからみれば十分にワルでした。
それでも、究極のワルにはなれないという。
きっと、彼の友だちや知人に、
上には上のワルがいたんでしょうね。
それこそ、ぼくなんかは
テレビや映画なんかでしか見たことのない、
人を殺して眉一つ動かさない冷血漢とか、
強姦なんか朝飯前みたいな
畜生もどきのような人種を
たくさん知っていて、
そんな連中と自分を
比べていたのかもしれません。
本当はそんな人種にならなくて
よかったと思っているのに、
どこかで憧れていたりする。
だから「おれの悪いところ」
なんて表現を使う。
で、この『妖説太閤記(下)』。
山田風太郎さんの描く豊臣秀吉は、
この上司がどこか憧れているような人でした。
そんなワルを、
これでもかってくらいに書ける山田さんって凄っ。
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山田 風太郎
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