2015年9月28日月曜日

『妖説太閤記(下)』(山田風太郎)読みました。

この前の『鬼平犯科帳9』の
感想で書いた「上司」は、
かなりの太っ腹で、清濁併せのむというか、
世間の常識からすれば、
「それって詐欺じゃない?」
と言われかねないようなことでも、
「大丈夫、大丈夫」と、
平気でやっちゃうような人でした。

その「上司」が、しみじみと
こんなセリフを言ったのを覚えています。

「ワルになりきれないのが、
 おれの悪いところだ。
 ここってトコでブレーキがかかる」

この上司、ぼくからみれば十分にワルでした。
それでも、究極のワルにはなれないという。

きっと、彼の友だちや知人に、
上には上のワルがいたんでしょうね。

それこそ、ぼくなんかは
テレビや映画なんかでしか見たことのない、
人を殺して眉一つ動かさない冷血漢とか、
強姦なんか朝飯前みたいな
畜生もどきのような人種を
たくさん知っていて、
そんな連中と自分を
比べていたのかもしれません。

本当はそんな人種にならなくて
よかったと思っているのに、
どこかで憧れていたりする。
だから「おれの悪いところ」
なんて表現を使う。

で、この『妖説太閤記(下)』。

山田風太郎さんの描く豊臣秀吉は、
この上司がどこか憧れているような人でした。
そんなワルを、
これでもかってくらいに書ける山田さんって凄っ。


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