2015年9月24日木曜日

『鬼平犯科帳(9)』(池波正太郎)読みました。

昔、工場まわりの営業マンを
していたことがありました。
売っていたのは、結構大きな機械設備。

大変だったのはその搬入時です。

重機が入らないような小さな工場だと、
脇の公道にクレーン車を横づけにして、
塀ごし屋根ごしにつり上げて、
機械を敷地内におろすんです。

そんな搬入作業をしていたときのことでした。

公道に止めたクレーンが邪魔だと
クレームが入ったんです。

苦情対応をするのは営業担当の役目。
つまり、ぼくです。

どうしよう、やだな、平謝りするしかないな。
だって本当なら、
警察から道路の使用許可をもらわないとダメなのに、
申請すらしていないし。

経費削減とかいって、
上司からは交通整理の警備員は使わず
ちゃっちゃとすませろっていわれて、
その通りしちゃってるし。

なんてことを思いながら、
クレーム主のところに行くと、

ダボダボズボンの鳶服を着た
威勢の良い江戸っ子職人という感じの
親方と若い衆の2人組。

おずおずと出てきた
よれよれネクタイのぼくを見つけるやいなや
「兄ちゃんが、しきってんのかい!」と、
ドスのきいた声を張り上げたんです。

ぼくがビクッとしたそのとき、

後ろから「いや〜すまんね〜」
と声がかかりました。

なんと、
あの警備員不要と命じた上司です。

上司は、
てやんでぇ調の2人に笑顔で話しかけて、
即座になだめると、

「きくち、あとよろしくな」と言って、

そのまま、2人を連れて、
近くにあったピンク街のほう行っちゃったんです。
あの上司、カッコ良かったなぁ。

で、この『鬼平犯科帳9』。

鬼平を読んでいると、物語のあちこちで、
あの上司の顔が浮かんできます。



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