2013年7月11日木曜日

『ヴェイスの盲点―クレギオン〈1〉』(野尻抱介)読みました。

こんな選評をよくみかけます。
「文章の書き方や構成など細かい部分は荒削りだが、
 作品全体から醸し出される雰囲気に
 非凡な才能が感じられる」

新人対象の文学賞で、
1等賞とかに選ばれた作品に対するコメント。

要するに、
「まだ若くて老練な技は使えないけど、
言ってることは面白いじゃん。期待しているよ」
ってことでしょうね。

たしかに、その作品を読みながら、
「なんだよこの文章」って何度も突っ込んだくせに、
面白いって思えるものは結構あります。

そう思って、その作家さんを気に掛けていると、
作品を追うごとにうまくなっていき、
ついにはもう、めろめろになっちゃったりする。
(1作ごとに期待がなくなる場合もありますけど…)

で、この『ヴェイスの盲点 クレギオン』。

最近の作品(『南極点のピアピア動画』とか
『ふわふわの泉』とか)を読んで、
はまりだした野尻抱介さんの作品。
その野尻さんの処女作でした。

初期の作品から追いかけて、
めろめろになるパターンとは逆で、
期せずして、最新作→処女作品の順で読んでいました。

ということは、今回読んだ処女作は、
上の選評からすると「荒削りだけどイイ」になるはずです。
ところがどっこい、荒削りじゃないんですね。
ちゃんとしてるんです。

どっちかというと、
最近読んだ新しい作品のほうが、
内容はイイネ!なのに荒削り。
作者のプロフィールをみると、
処女作からはもう20年もたっていて、
年をとっているハズなのに、
作品はなんだか、だんだん若くなってるような…。

もしかしたら、この作家さん自身が、
タイムスリップとかパラレルワールドとかの
SFの世界を自ら体現しているのかもしれません。



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野尻 抱介
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