2013年6月26日水曜日

『遠い山なみの光』(カズオ・イシグロ)読みました。

ワクチンっていうのは、
病気にかかる前に、
その病気のもとを身体の中に
入れ込んでおくモンですよね。
症状が出ないように、
弱くした病原体とかウィルスなんかを
注射したりする。

それをやっておくと、
身体がその病気野郎の顔を覚えるから、
次に遭ったときには
「あっ、この野郎っ、入ってくんな!出てけ!!」
って追い出すことができる。

予備知識が与えられているから、
即座に拒絶の反応ができちゃうんですね。

で、この『遠い山なみの光』。

ワクチンの作用と同じように、反応できちゃいました。
といっても、
拒絶の反応じゃなく、正反対のウェルカムの反応。

前に書いたように、
カズオ・イシグロさんの小説はこれが3冊目で、
以前読んだ2冊がとてもよかったから、
この作品も、すんなり受け入れられました。

ただ……
その2冊のワクチン接種がなかったら、
ウェルカム反応が起きていたかどうかは疑問なんです。
この『遠い山なみの光』を最初に読んでいたら、
もしかしたら、
そんなにはまってはいなかったかもしれません。

これからイシグロ作品を読んでみようかなって
思う人がいたら、
ぼくにワクチン的な作用をもたらした
『日の名残り』とか『わたしを離さないで』
とかから始めるのがいいかな。

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