昔、助監督をやっていた頃、
「模倣の天才だ」って思う監督についたことがあります。
いいなと思った映画やら本やらの内容を、
自分の作品に恥ずかしげもなくアウトプットしちゃう。
一度、尊敬と冗談をまぜこぜにして
その監督に言ったことがありました。
「真似はいけないんですよね?」
すると監督は、
「単なる真似をつなげるだけじゃあ、映画はできないよ。
それを咀嚼して、消化吸収して、自分の血肉にしてるから、
真似が真似じゃない塊になる。
それをつなげれば映画になる」と。
さすが、ぼくが「模倣の天才」と思ったお人。
で、この『さらば雑司ヶ谷』。
あの監督と同じでした。
観たもの、聴いたもの、身の回りのいろんなものを
自分の血肉にして、塊にしてつなげてます。
こんなふうに消化吸収して吐き出せる力、ぼくも欲しいです。
さらば雑司ヶ谷 (新潮文庫)
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樋口 毅宏
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