2011年6月14日火曜日

いい本の匂い

『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』(山田ズーニー)読みました。

「原稿を書くときには、
そこまでやらなくても、いいんじゃないのってくらいに
細かく事実関係を調べたり、
イラストつくるときには、画面で目一杯拡大して、
見た目には絶対わからない部分の色を変えたり
……そんなムダな作業に時間とられちゃうんですよ」

それだけ作品つくるのに情熱込めているんだから仕事頂戴ね、
という営業トークを、とある出版社の編集さんに
言ったときのことです。

編集さんは、
ぼくの打算的な発言の、打算的な部分は気にもとめず、
その言葉を真正面から受けとめ、熱くなって、

「そうなんです!そうじゃないとダメなんですよ!
つくる側が手を抜くと、読者はなぜかそれがわかるんです。
ココがおかしいって指摘してくる人はいませんが、確実に数字が落ちる。
なんていうか、匂いみたいなモンですね。
いい本の匂いとダメな本の匂いは、
知らず知らずに嗅ぎ分けられてるんですよ、きっと」

うん、そうなんでしょう、きっと。

編集さんの言葉に納得してしまったぼくは、
その後、多少誇張っぽく脚色した自らの営業トークに縛れて、
ひーひー言いながら、本をつくっています。

で、この『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』。

本の後ろの奥付を見てみると、なんと29刷。
「多少売れ残ったとしても、だいたいこれくらいでしょ」
と予想して最初に印刷した分が1刷で、
その予想が上回って
「じゃあ追加でこんだけ刷ろう」と2刷になり、
「えーっ!もっと売れちゃった」と3刷して
……そんなことを29回も続けられたのがこの本でした。

面白かったです。いい本の匂いしてました。

本をつくる仕事をしていながら、
ときどき、文章作成の教科書みたいな本を読んで
カンニングしておかないと、怖くなっちゃうので、
手に取った本なんですが、
文章の勉強というより、話が面白かった。

たぶん、ぼくだけだと思うのですが、
冒頭部分はうるうるしながら読んでました。

よし、ぼくもいい匂いの本つくろっと。


伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)
山田 ズーニー
PHP研究所
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