2011年1月9日日曜日

「優しさ→涙」の法則

『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル)読みました。


「優しくしないでよ 涙がでるから」
……『ひとりぼっちで踊らせて』(中島みゆき)の曲の一節です。

優しくされると涙が出るって本当です。

とくに悲しいことや、
つらいことを現在進行形でど真ん中で体験している人には、
ほぼ間違いなくこの「優しさ→涙」の法則が働きます。

先日、ぼくの親父がガンで亡くなりました。
72歳でした。最後の1カ月ほどは、声もうまく出せなくなって、
ガラガラのしゃがれ声を絞り出しながら、
自分の意思を何とか伝えていました。

それを看病していたのがお袋。

少し疲れはみせていたものの、
まったく気丈に振る舞っていて、
ぼくは、お袋ってやっぱスゲーって思っていました。

でも、その気丈な人にも「優しさ→涙」の法則は
情け容赦なく適用されちゃうんです。

ぼくとかみさんが親父とお袋を車に乗せ、
病院への送り迎えをしたときのことです。
病院のスタッフの人たちによる
優しさ攻撃が一斉に開始されたんです。

車いすでもつらそうにしている親父には、
待ち時間の間、空いた診察室のベッドを使わせてくれたり、

お袋には常に、
「元気出してね」
「大丈夫だからね」
「何もしないで側にいるだけで、看病になっているんだからね」などと
次々声をかけて慰めたり励ましたり。

ついに、お袋の気丈バリアーは、
間髪をおかない優しさ攻撃に屈してしまい、
どどーっと涙をこぼします。
そうなるぼくも、もらい涙。
病院の一角は、とんでもない状態になってしまいます。

ちょっと病院の人、ひょっとして泣かせるためにやってんの? 

なんて思えちゃいそうですが、
やっぱ人間って、基本は優しいもんなんでしょうね。
つらそうな人や悲しそうな人に対してはとくに。

悲しさやつらさは、我慢して心の中に閉じ込めておいてはいけない、
泣くなり叫ぶなりして外に出さないとダメって聞いたことがあるけど、
もしかして、優しさって、
そんなイヤなものを外に出すための下剤みたいたモンかもしれないですね。

あっ、しまった!

これまでのお話は
『これからの「正義」の話をしよう』
とは何の関係もありませんでした。

でも、たくさん書いちゃったんで、
書き直すのも面倒だし、このままってことにしちゃいます。

本はそれなりに面白かったです。はい。


これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
マイケル・サンデル Michael J. Sandel 鬼澤 忍

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