2011年1月3日月曜日

慣れてきた。

『今朝の春』(高田郁)読みました。

新聞や雑誌の仕事がメインになっている最近のぼくは、
ほとんどテープ起こしの作業をやらならくなりました。

テープ起こしとは、録音したインタビュー現場の音声を聞きながら、
そのまま文字に書き起こしていく作業です。
1字1句もらさず文字にしていこうとしたら、
1時間のインタビューでも、丸1日かかるほどの作業になります。

でも、昔はこの作業をしないと、記事にする原稿ができなかった。
テープ起こしをした膨大な量の文字を読みながら、
必要ない部分を削っていき、残ったのもので文章を組み立てていく。
そんな工程を経ないと、記事がつくれなかったんです。

この仕事を始めてから5〜6年は、そうやって記事をつくってきました。

それがある日突然、
「テープ起こししないで原稿を書いてみよう」って思い立ち、
やってみると、なんと!
それまでよりも、読みやすく深い内容の文章になることに気づきました。

その日から、ぼくは、
一冊の本に仕上げるような分量のあるインタビュー原稿は別にして、
新聞や雑誌などに載せる短い原稿ではテープ起こしをしなくなりました。

さて、
この5〜6年の間に書き連ねた
途方もない分量のテープ起こしの文字たちは、無駄だったのでしょうか。

もちろん、無駄じゃないって思いたい。

ぼくは、そんな下積みの作業があったから、
今があるんだと思ってるんです。

つまり、慣れ。

慣れないうちは、面倒なことでも遠回りでも、
よいしょよいしょって越えていかないとダメなんですね。

特に、もの覚えが悪く、要領の良くないぼくのような人間にとって。


で、この『今朝の春』。

シリーズ4作目ってことで、
作者が物語をつくるのにこなれてきたなって、感じました。

そして、読者のぼくのほうも、この作者の文章に慣れてきた。

そこで次は、
その慣れを「飽き」にしないため、どんな工夫を凝らすか。
これは、ぼくが自分で原稿をつくるとき
毎回頭を悩ませている事柄でもあります。


今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
高田 郁

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