2010年9月9日木曜日

天丼と小説

『西巷説百物語』(京極夏彦)読みました。

東京の神保町に「いもや」ってお店があります。
みなさんご存じかもしれないですが、一種のチェーン店で、
そう離れていない場所に4〜5店ほどあり、
いずれも天ぷらやとんかつなどの揚げ物を
食べさせてくれるところです。

ぼくはその中でも
白山通り沿いにある天丼のお店がお気に入りで、
しょっちゅう利用させてもらっています。

初めて行ったのは水道橋にある予備校に通っていた時代。
だからもう20、30年前です。
いついっても、
同じ職人さんが、同じ動きで天丼を次々につくっていく。

カウンターしかない店なので、スグ目の前で職人技を堪能できます。

美味しくて値段も手ごろなのはもちろんなんですが、
ぼくがその店を気に入っていたのはその職人さんの動きにもあったんです。

小刻みに上下に少し揺れながら、
人数分のネタに衣をまぶし、
油の中にひょいひょいと滑らせながら入れていく。

その動作はたぶん1センチの違いもないほど毎回同じ。
たぶん小刻みに揺れる上下の幅も毎回同じ。
雨の日も雪の日も、かんかん照りの日も同じ。

注文する以外、1度も話したことはありませんが、
この人すげーって思っていました。

その後、予備校の勉強も無駄に終わって、
横浜の映画学校に行き、あちこちぶらぶらしていたこともあり、
10年くらいは「いもや」に足を運ばない時期がありました。

で、何かの用事で10年ぶりくらいに行ってみると
──いたんですね、その職人さん。

しかもぼくが覚えている動きとまったく同じ。
びっくりでした。
(今はその職人さんも引退してしまったのか、
 若い人に変わってしまいましたけどね)


……で、
京極さんのこの本。職人技でした。


西巷説百物語 (怪BOOKS)西巷説百物語 (怪BOOKS)
京極 夏彦

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