ぼくは、昔『葬儀・法要のあいさつと手紙』って本をつくったことがあります。
この中に故人に捧げる言葉である「弔辞」の文例をいくつか載せました。
もちろん、弔辞を読む人も故人も、
その設定は全部ぼくの頭の中でつくったもの。
つまりは、創作の文章です。
ぼくは、文章を書いているとき、
その世界にどっぷり浸ってしまうというヘンなクセがあります。
もちろん、この弔辞の文例を書いているときもそうでした。
ようするに、ぼくの頭の中でつくりあげた架空の故人に思いを寄せて
「あなたと過ごした時間がとても楽しかった」みたいなことを、
せつせつとイメージしながら書き進めていたんです。
そのとき、事務所のドアが開き、いつものように「おはよう」と言いながら、
会社の仲間が入ってきたらしいんです。
でも、ぼくはあまりにもその世界に浸りすぎていて、
仲間に気づかず、ペコペコとキーボードを叩き続けていました。
すると、そいつはぼくの顔をのぞき込み、
「おまえ、なんで、泣いてんの?」
ぼくは、自分が泣いていることにも気づかずに
架空の人による架空の人に捧げる弔辞を書いていたんです。
この『永遠の0』って本は、もちろん弔辞文例集ではありません。
でも、泣けます。
読んでいて気がつかないうちに涙がたれています。
もしかしたら、ひっくひっくとしゃくり上げて泣き出し、
止まらなくなっちゃうかもです。
オススメの読み方は、この『永遠の0』と『葬儀・法要のあいさつと手紙』で
どちらが涙の量が多いかの比べ読み。
そんなことするヤツは誰もいないか。
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