決まりです。今年のぼくの読書遍歴、上半期ベスト1。とっても愉快、とっても考えさせる、とってもさわやか。
森見登美彦さんは、単行本にまとまった作品としてはこれが10作目だそうで、ぼくは彼の作品が大好きで全部読んでいます。
たいていの本は読み終えるとブックオフ送りとなるのに、森見さんのこれまでの9作品はストック用の本棚に保管されています。そしてまた1冊増えちゃいました。
読み始める前に、書評とか宣伝用のホームページとかを見ていたんですが、そこには、これまでの作品にあった舞台設定や人物の背景なんかから離れ、作風が一変したみたいなことが書いてあります。
それを読んで、最近好きな作家から裏切られることが多かったぼくは、少し心配だったんです。
でも、最初の数ページ読んだだけで、そんなものはどこかに吹き飛んでしまい、もうガツガツって感じでページをめくっていました。
この森見さんって、このままいったら、悔しいけれど、ぼくよりも先にノーベル文学賞とっちゃうかもしれません。
ホントにオススメ。楽しい本です。
物語の中の些末な部分ですけど、ぼくが面白いと思ったことろをひとつあげておきましょう。
主人公の少年アオヤマ君が親友のウチダ君と話す場面。
かつてウチダ君は、別の街に暮らしていて、転校してこの学校にやってきました。
転校前の学校でウチダ君は仲の良い友だちがいて、そこを離れるのがとってもイヤだったと話します。
そして主人公のアオヤマ君と友だちになる前は、以前の学校に「本当に帰りたいと思っていた」と言うのです。
それを聞いたアオヤマ君は、「今は?」とウチダ君に聞いちゃいます。
アオヤマ君と友だちになれたから、帰りたいと思わなくなったって感じの文脈なのに、そんなのわかるだろ、って感じなのに、それでも聞いちゃうんです。
この「今は?」というセリフにしびれちゃいました。
読み飛ばしてしまっても物語の進行には何も影響のないホントに些細な場面です。でもそんな細かなところにも「ウン、参りました」とうなってしまう。
読み終えて、思わずほおずりしちゃう本です。