2010年7月23日金曜日

「お金」っておかしくない?

『ハーモニー』(伊藤計劃)読みました。

ブログの画面をずずずっとスクロールして、読んだ本の書影を眺めたら……
……7月って、なんて素敵な月だったんだろう!
読書運急上昇の月でした!

その嬉しい読書体験に追加されたのがこの『ハーモニー』。
ズシンとくるいい本です。


近しい人には常々ぼやいているのですが、
ぼくには「それって、なんか間違ってない?」
と思っている社会システムがあります。

経済の基本となっている「お金」についてです。

宝くじが当たってもらえる100万円と、
本をつくる仕事をしてもらえる100万円が、
同じ価値ってどうなのよ、ってことです。

寝る時間を削って、あちこち調べまくって、
ずたぼろになる作業をこなして得られる報酬が、
なんの裏付けもない単なる「ラッキー」と同価値っておかしくない? 
って考えちゃうんです。

そこで、お金に代わるシステムができないものか、
本当の価値を表現できる流通の媒体がつくれるんじゃないか、
と模索して、アホなりに思いついたアイデアが
「感動ポイント」です。

邪魔にならない小さな器具を身体につけ、
それが脳波やなんかを分析し、
その人がどれくらい感動したかのレベルを
数値化して「感動ポイント」に変換しちゃう。
すっごく美味しかったら10万ポイントとか。

一方、市場に流通するすべての商品には感動ポイントを送受信できる
微細タグがつけられていて、商品の使用者が発する感動ポイントを認識できる。
認識されたポイントは、商品をつくった人や運んだ人、
店に並べた人や売った人などかかわった人全員に適正比率で自動配分され、
それぞれの人に送信される。

お金じゃなく感動ポイントでモノが流通する世界です。

なんてことになったら、いいんじゃないのと考えたりするんですが、
でもそうなったらそうなったで、また別の問題がきっと出てくる。

ひずみがある現在の社会のしくみに対抗して、理想の社会をつくる。
でもできた社会システムにもやっぱり問題や寂寥感みたいなものが生まれてくる。

やっぱり、人間ってどこまで行っても完全にはなれないんだよな
……なんてことを今さらながら思い出させてくれたのが、
この『ハーモニー』でした。


なお、お金に関する話は、単なるぼくのたわ言で、
『ハーモニー』にはまったく関係ありません。
そんなテーマもエピソードも1つも登場しませんです、はい。


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